朝日新聞 2012年6月21日 B-1へ全力投球 甲子園ヒーロー揚げ

 阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)の近所の飲食店が、ご当地空揚げ「甲子園ヒーロー揚げ」を広めようと奮闘中だ。地図やのぼりを作ってPRし、B級ご当地グルメの祭典「B-1グランプリ」への参戦を目指す。果たして名物の一品になれるか――。

甲子園ヒーロー揚げを手に阪神の勝利を喜ぶファン=兵庫県西宮市

手羽中+にんにくタレ 9店連携

 阪神対オリックスの交流戦が甲子園球場であった8日。鳥料理店「じゅげむ甲子園本店」に試合後、阪神ファンが集った。「勝利に乾杯!」。物心がついたと頃から阪神ファンの会社員、長島純さん(44)のかけ声でグラスをあわせたテーブルには、甲子園ヒーロー揚げが並んだ。長島さんは「一番ビールに合う。試合に勝った日に食べる味は最高です」と満面の笑みだ。
 店を営む山崎哲さん(44)が約15年前、球場近くの居酒屋で「ヒーロー」というメニューを見つけ、注文してみた。「手羽中」といわれる部分を揚げ、ニンニクしょうゆをつける料理だった。別の店でも同じような料理の名前の一部に「ヒーロー」がついていた。そのおいしさから「ヒーロー揚げ」として採り入れると、人気メニューになった。
 近年、ご当地グルメがブームだ。昨年11月に兵庫県姫路市で開かれたB-1グランプリには、過去最多の51万5千人が訪れた。山崎さんは「ヒーロー揚げをご当地グルメとしてPRできないか」と考えた。
 手羽先の空揚げを扱う居酒屋や、中華料理店などに声を掛け続けた。今年1月にヒーロー揚げを広める推進委員会を結成。「ヒーロー」の名前の由来は諸説ある。中国語の鶏肉(ジーロウ)の発音から来ているのではないかとも言われるが、タイガースの本拠地であり、高校野球の聖地があるこの地の名にふさわしいと、「甲子園ヒーロー揚げ」と名付けた。
 「手羽中二つ割りスタイル」「サクサクの衣」「香るにんにくタレ」が「3カ条」。骨の部分を片手で持って食べやすいのも特徴だ。1皿6本前後で400~500円程度で味わえ、各店がカレーソースをかけたり、ピリ辛の味にしたりして工夫を凝らす。
 おそろいのTシャツやのぼりを制作し、取り扱う9店舗の場所を記した「MAP」も1万部作って、西宮市観光振興課や西宮商工会議所、各店に置いた。
 これまで西宮市や神戸市などであったイベントでヒーロー揚げをPRした。作り方を教える親子教室を開いたほか、8月には西宮市の友好都市・高知県梼原町での催しに出向く予定だ。甲子園近くに温浴施設「鳴尾浜温泉 熊野の郷」(西宮市鳴尾浜1丁目)も協力し、施設内のレストランで6月からメニューに採り入れた。
 推進委員会の代表を務める山崎さんは「球場や西宮を訪れる人たちに各店自慢の味を楽しんでもらい、にぎわいがある街にしたい」と話している。 (瀬戸口和秀)

PRする各店舗の人たち=西宮市甲子園八番町