朝日新聞 2009年5月6日 甲子園の名物に

 西宮市の阪神甲子園球場近くで鳥料理店を営む山崎哲さん(41)が、手羽空揚げを甲子園名物にしようと奔走している。手羽空揚げは一部の食肉販売会社で「ヒーロー」の名で呼ばれ、高校球児や阪神タイガースの「聖地」との相性はばっちり。加えて、もともと西宮市内には空揚げを看板メニューに掲げる鳥料理店が多い。西宮商工会議所も支援に乗り出し、ご当地グルメとして売り出す夢が膨らんでいる。 (鈴木康朗)

「ご当地グルメ」へ膨らむ夢

 山崎さんは高知県出身。高校生の時からバイクで旅に出て、各地の名物を食べるのが趣味だった。現在は西宮市甲子園八番町で焼き鳥店「じゅげむ」を切り盛りしている。
 ご当地グルメがブームとなるなか、山崎さんは「甲子園にも何か名物料理を」と考えた。ひらめいたのがヒーローだった。
 山崎さんがヒーローの名を初めて知ったのは約20年前。西宮市内の居酒屋で偶然目にした見慣れぬメニューに「どんな料理?」と興味がわいて注文した。
 名前の由来ははっきりとは分からないが、大阪の大手食鳥肉販売会社「鳥芳」では、約30年前からヒーローの商品名で手羽空揚げを販売してきたという。同社の担当者によると、当時流行していた甲斐バンドの曲「HERO(ヒーローになる時、それは今)」にあやかって名付けたらしく、「鳥肉界のヒーローを目指すということでしょう」。現在では関西以外でもヒーローの名で手羽空揚げを売っている業者がいる。
 山崎さんは今年になって西宮商工会議所にアイデアを持ち込んだ。「おもしろい」と会議所も乗り気で、西宮の手羽空揚げのルーツを探ることに。B級グルメで街おこしを目指す団体でつくる「愛Bリーグ」(事務局・青森県八戸市)への参加も申請中だ。
 山崎さんが考えるヒーローの基本形は「サクサク衣で、ニンニクしょうゆたれをつけて食べる」。広く他店にも取り組みへの参加を呼びかけ、食べ歩き地図を作ることがとりあえずの目標という。「ヒーロー目当てに全国から西宮に人が集まるようになれば」と意欲は尽きない。